代表コラム
これからの教育を担う先生の役割とは
「これからの子どもたちに求められる力とは?」
メディアで日本の教育が直面する課題について語られる際は、とかくどのような資質や能力を子どもに身につけさせるかという観点になりがちです。
しかし、教育とは生徒単独で成り立つものではありません。
今回の記事では、これからの教育を担う先生の役割に注目してみました。
おそらく、これからの教育を担う先生には
『ティーチャー』
『ファシリテーター』
『コーチ』
という3つの役割が求められるようになってくることでしょう。
それぞれの役割について、少し補足説明したいと思います。
◯ティーチャー
まず「ティーチャー」とは、従来の教師像に近いイメージです。
体系化された知識や技能を子どもたちにしっかり定着させる役割を担っています。
とは言え、これまでの教室でよく見られたような網羅的かつ羅列的な学習指導のままでは、限られた時間内で教科内容をクラス全員に十分に理解させることは難しいのが実情です。
今後の授業では、聞き手の興味・関心を引きつけながら理解を促す「ストーリーテリング」の技術の重要性が増してくるに違いありません。
◯ファシリテーター
次に紹介する「ファシリテーター」という概念は、もともと市民参加型のまちづくり活動から発生したものです。
あくまで中立的な立場から活動の支援を行うのが特徴で、例えば会議を行う際には、議事進行やセッティングなどを担当します。
この役割に必須なのは、参加者が安心して話ができる雰囲気を作り出し、話し合いが建設的な議論に発展していくよう「場をデザインする」力。
学校現場においても、生徒が主体となる授業づくりを支える上で大切なスキルになるはずです。
◯コーチ
最後の「コーチ」は、スポーツの世界でよく耳にする言葉ですね。
フルマラソンを例に挙げると、練習メニューを一緒に考え、設定した目標を共有していたとしても、実際に走るのは本人です。
厳しい練習のなかで、諦めそうになる気持ちを奮い立たせて、選手を「目標に向かって導く」存在と言えるでしょう。
現在、コーチングのスキルはビジネス領域でも一般的になってきていますが、その流れは教育業界にもやって来るものと思われます。
◎先生の役割が多様化する背景
こうした動きの背景にあるのは、我々を取り巻く社会環境の大きな変化であることは疑いようもないでしょう。
世界人口の増大、エネルギー・資源の枯渇、超少子高齢化社会の到来、都市への人口集中、人工知能の発達・・・
これらのキーワードをニュースで見聞きしない日はありません。
変化が激しく先行きが不透明な時代に突入し、自分の頭で考え、判断し、行動する力がより一層求められるようになってきています。
その結果、子どもたちが学校で「何を学ぶか」「どのように学ぶか」が大きく見直されつつあるのです。
では、それらは具体的にどう変わっていくのでしょうか。
◎「何を学ぶか」はこう変わる
つい先日(2月14日)、学習指導要領の改訂案が公表されました。
文部科学省は今回の改訂の大きなポイントである「新しい学力観」について、
「確かな学力」を構成する三要素を
①知識・技能
②思考力・判断力・表現力等
③学びに向かう力・人間性等
と定義しています。
これまでの日本の教育は「①何を理解しているか、何ができるか」を中心に考えられてきましたが、これからは「②その知識や技能をどう使うのか」や「③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という点にまで踏み込むという方針を明確に打ち出したのです。
また、日本の公教育改革の第一人者である藤原和博氏(現 奈良市立一条高等学校校長)は、これからの子どもに求められる力を「情報編集力」と表現しています。
20世紀は「みんな一緒」の成長社会であり、いち早く正解を導き出す「情報処理力」の高さが重要視されてきたと藤原氏は分析しています。
しかし、21世紀は「それぞれ一人一人」の成熟社会へと変容し、唯一の正解が存在しないなかで、周りの人と議論して、考え方や見方を修正しながら、お互いに「納得解」を探っていく力が必要になってきたというのです。
◎「どのように学ぶか」はこう変わる
次期学習指導要領では、上記の学力を身につけるために「どのように学ぶか」という点についても言及されています。
そこで登場するのが「主体的・対話的で深い学び」というキーワードです。
【主体的な学び】
学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
【対話的な学び】
子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
【深い学び】
習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。
※文部科学省ホームページより
この「主体的・対話的で深い学び」を実現するための手段の一つとして、新指導要領の検討時に話題になったのが「アクティブ・ラーニング」です。
具体的には、議論や対話を通じて問題解決に取り組んだり、校外に調査・研究に出かけたりするなどの能動的な学習手法のことです。
従来の画一的な一斉授業からの転換を図るという方向性が示されたと言えるでしょう。
(ちなみに「アクティブ・ラーニング」という概念は、定義が曖昧で、現場の混乱を招きかねないとして、最終の改訂案ではその文言は外されました。)
また、新進気鋭の教育学者であり哲学者でもある苫野一徳氏(熊本大学教育学部准教授)は著書『教育の力』 (講談社現代新書)で、これからの学びのあり方について、今のような画一的・一斉型のものから、学びの「個別化」「協同化」「プロジェクト化」の融合型へと転換していくことをポイントの一つとして挙げています。
学びのあり方も進度も、興味・関心も人それぞれ異なっているなかで、画一的・一斉型の学びは非常に効率が悪く、徹底的にカスタマイズする必要がある、と。
それだけではなく、子どもたちの知恵や思考を持ち寄る「協同的な学び」と、それぞれの子どもたちが自らの目的を持って挑戦する「プロジェクト型の学び」を融合する必要があるとも述べています。
◎さいごに
以上を踏まえ、「確かな学力」を伸ばしていくにあたり、
①知識・技能
・学び方:学びの個別化
・先生の役割:ティーチャー
②思考力・判断力・表現力等
・学び方:協同的な学び
・先生の役割:ファシリテーター
③学びに向かう力・人間性等
・学び方:プロジェクト型の学び
・先生の役割:コーチ
という関係性が最適なのではないかと我々は考えるに至りました。
つまり、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の変化に伴い、先生の役割も多様化するということ。
これからの「先生」は、子どもを学びの主体と捉え、その学びの場面に応じて、3つの役割を使い分ける技術が必要になってくることでしょう。
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