代表コラム
【探究堂日記 #13】「気持ち悪い」から一転大人気に! シマイシビルの謎に迫る
探究堂の年長児クラス(ぷれりかクラス)が取り組む『川の生き物』プロジェクトもいよいよ最終日を迎えます。
この日はまず、『川の生き物』に対する理解をさらに深めるため、NHK for SchoolのWebサイトで動画を鑑賞することにしました。
アメンボやトビケラの生態をコンパクトにまとめた動画をたまたま見つけたからです。
小学校中学年を対象とした内容でしたが、何度も生き物探しを実施し、体験知を積み重ねた彼らにとってはさほど難しくないようでした。
「今改めて『川の生き物』という言葉を聞いたら、どんなことを頭に思い浮かべるかな?」
プロジェクトのスタート時と同様の問いを子どもたちに投げかけます。
テーマに対するイメージがどのように変化したのかを確認するためです。
「ハグロトンボの幼虫は(私たちが採集活動をした)全部の場所にいたよ。あと、アメンボも」
いつも元気いっぱいの女の子が教室の壁に掲示された鴨川デルタの地図を指差しながら答えてくれました。
そこにはみんなで捕まえた水生生物の写真が貼り付けられており、どこにどんな生き物がいたかが一目瞭然です。
「トビケラの幼虫って、なんであんなに上手く小石を集められるんやろ」
「そうそう。集めた小石で巣を作んねんな」
「糸を使っていて、なんか蜘蛛っぽいし」
川底の石にヒゲナガカワトビケラの巣を見つけた実体験とふりかえりの直前に観た動画の内容がリンクし、ますます発想が豊かになっていきます。
「アメンボが水に浮く理由がわかって面白かった」
「脚の毛と油がポイントやんね!」
「けど、やっぱり身体が軽いのも大事やと思うわ。重すぎたら沈むんちゃう?」
知ったことや体験したことを元に自分なりの仮説を立てる姿を見ると、彼らのこの数ヶ月間での成長を感じます。
せっかくなので保護者の方にも聞いてみると、以下のような返答が返ってきました。
・賀茂川と高野川のそれぞれの採集場所はすぐ近くなのに、そこにいる生き物が結構違う
・陸にいる昆虫に比べて、川の生き物は動きが早くて捕まえにくい
・川の生き物は小さなものが多く、その中でナマズが飛び抜けて大きいことに改めて驚いた
・鯉は川の流れとは逆向きに泳いでいることが多い
童心に戻って生き物探しに取り組んでみることで、大人にも新たな発見がたくさんあったようです。
ふりかえりの後半はなぜかシマイシビルに関連する意見が集中することになりました。
「シマイシビルが伸び縮みするのはなぜか?」に始まり、「なぜいつも石にひっついてるのか?」「吸盤で石にひっついているのになぜ進めるのか?」などの疑問が挙がり、それに対していろんな予想が飛び交います。
そのシルエットと動きから、生き物探しの最中は全く不人気だったシマイシビル。
それが最後の最後でみんなの注目の的になるのは何とも不思議な気分です。
みんなの意見が模造紙を埋めつくし、本来であればこれをもってプロジェクト終了となるところ、実は私たちに課せられた最終ミッションが存在することを子どもたちに伝えます。
突然の発表にぷれりかキッズも驚きを隠せません。
『川の生き物』プロジェクトの最終ミッション、それは自作のセルビン(仕掛け)で魚を捕まえることです。
前回の授業では明らかに時間不足のため失敗に終わった本ミッション。
もう一度挑戦したいという思いから、授業前日にセルビンを川に設置しておいたのです。
「魚、(セルビンに)入ってるかなあ……」
大人も子どもも期待と不安で胸がいっぱいのまま現地に向かいます。
夜中に雨が降ったので少し心配していましたが、現地に到着すると仕掛けは無事流されずに残っていました。
川底から仕掛けをそっと引き上げ、ドキドキしながらセルビンの中の状態を確認します。
私のシナリオではここで大量の魚を捕まえて大団円のはずでしたが、現実はそう甘くはありません。
せっかくの仕掛けは空振りに終わり、調査隊一同に落胆のムードが漂います。
川の中を何匹もの魚が悠々と泳いでいく姿を見ると、悔しい思いがこみ上げます。
最終ミッションを終えて少しだけ時間が余ったので、自由遊びの時間を設けることにしました。
てっきり鴨川デルタ恒例の飛び石渡りでもするのかなと思いきや、子どもたちは生き物探しの続きを行いたいとのこと。
「文さん、またシマイシビル見つけた!」
ある女の子は次々と石をめくっては、そこにシマイシビルが張り付いていないかひたすら確認していました。
プロジェクト開始当初は「気持ち悪いから見るん嫌や」と敬遠していたことを考えると、大きな変化です。
さすがに手で直接触ることはできないようでしたが(笑)。
探究堂の取り組みは単に知識を増やすことが目的ではありません。
プロジェクトを通じて、今までの「ものの見方」に少しでも変化が生まれることこそが探究の本質であると考えています。
それは周りの世界との接し方が変わることに他ならないからです。
ぷれりかキッズの行動の変化を実感し、充実した6週間となりました。
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